腸内細菌はどこから来るか

子宮の中は無菌状態ですから、当然、赤ちゃんの腸内も無菌状態で生まれて来ます。それが、皆さんのお腹の中にはすでに100兆個棲み着いているわけですから、何処からかやって来たことになります。

母親から受け継ぐという説もありますが、ほぼ同時に産道を通ってくる双子の赤ちゃんでも腸内細菌叢(そう)は違うので、受け継ぐのであれば、同じ母親から生まれた子供の腸内環境は一緒のはずです。ですから受け継ぐというのは違います。

腸が外界と繋がっているのは「口」と「肛門」

無菌状態だった腸にいつの間にかうじゃうじゃ腸内細菌がいると言うことは、何処からか入って来たことになります。

腸に繋がっているのは口かお尻の穴です。口は暖かくて湿り気があるので、殺菌とは反対に細菌が増殖する仕組みになっています。その増殖するところで、どの動物も物を食べるということ、増殖した細菌たちが食べ物と一緒に送り込まれると考えた方が自然です。

口から入って来るということになると、身の回りにいる細菌、環境中の細菌が入ってくるということになります。

細菌の歴史は地球の歴史

私達の祖先はもとをたどれば細菌です。細菌の歴史は38億年前に遡ります。当時の地球は酸素もなく海も今の成分とは違い、とても今の生物が棲めるような環境ではありませんでした。

そんな生物にとって悪環境の海の底で細菌が生まれます。その後光合成をする生物(シアノバクテリア)が誕生したことで、酸素が作られるようになりました。

生物が住める環境を作ったのは細菌たち

大気に酸素が放出され、オゾン層が形成されても動植物の栄養はまだ陸地には存在しませんでしたので、動植物は陸地に上陸することは出来ませんでした。

そこで活躍したのも細菌たちです。細菌は波打ち際に上がった動植物の死骸に取り付き、分解を始めます。分解した栄養分が土に混ざることで、植物の栄養ができました。栄養が出来たことで植物は上陸に成功し、内陸へと進出していきます。あとを追うように草食動物が上陸し、次いで肉食動物もエサを求めて上陸していきました。

こうして地球上には生物が溢れていくこととなったのです。

地球と月の違い

地球と月は同じ頃に誕生しました。しかし、地球は生物であふれているのに月には生物はいません。違いは「土」と「砂」です。地球には土がありますが、月には土はなく砂です。

土と言うのは細菌たちと関係があります。砂漠化したところに一生懸命、木を植えても枯れるばかりでまともに育ちません。植物が育たなくなったのは、土の中にいる細菌が植物を育む環境を作らなくなったからです。生物が豊かに生活していくためには、土の中にいる細菌たちの存在が必要不可欠なのです。

地球の循環を司る4つの細菌群

地球の表面も、私たちのおなかの中も動植物を分解する細菌で溢れています。土壌中の細菌を調べたところ、『タンパク質分解菌群』『でんぷん分解菌群』『油脂分解菌群』『セルロース分解菌群』という細菌の塊・コロニーが出来上がっていました。

この4つのコロニーが有機物(動物と植物)を分解して土に戻してしまいます。動物が死に、木や草が枯れ、分解され土に戻り、植物の栄養になって動物の餌となり排泄し、分解され土になり、植物が成長する。地球の循環を司っている細菌たちが、この4つのコロニーです。

これらの細菌を総称して「土壌菌」と呼んでいます。

土の正体

地球の土は、月と同じ砂粒に細菌たちがバイオフィルムの有機物膜(お台所のヌルヌルのようなもの)を張り巡らし、そこに住んでいます。土の上から死んだ動物や枯れた植物が流れてきます。

その有機物を砂粒の周りのバイオフィルムの中で待ち構えていた4つのコロニーの細菌たち(土壌菌)が分解に分解を重ね、ミネラルまで分解したら、そのミネラルをバイオフィルムの中に埋め込みます。これが土の正体です。

植物の根っこは、バイオフィルムに包まれたミネラルを求めてやってきます。バイオフィルムに包まれた状態を『キレート化』といい、植物の根っこは吸いやすくなるのです。

細菌の多様性が、生物の多様性を支えている

土壌菌は、タンパク質、でんぷん、油脂、セルロースを分解して、動植物などの有機物をミネラルにまで分解します。なので4つのコロニーの細菌たちがいないと植物が育ちません。これが土の正体です。そのため細菌たちのいない月では、いつまで待っても土はできません。砂のままです。